★バリ日記⑧ 舟には目がある。

バリに行くと、ボクは決まってサヌールという町の小さなホテルに滞在した。だいたい一泊千円くらい。

大人気のクタビーチやVIPなリゾートホテルがひしめくヌサドア、日本人が好む田舎リゾートのウブドゥ、都市部のデンパサール、これらを結ぶ真ん中くらいににあって、どこへ行くにも便利な場所だからだ。

おまけに、バリ島最初のリゾート地だから、ビーチリゾートとはいっても、今ではすっかり村社会に溶け込んで、リゾート特有の孤立感がない。

そしてもう１つ、町の端から端までの海辺を散歩できるのが嬉しい。そこに沢山のカワいいプチホテルのガーデンテラスやプール、レストランなどが並ぶ。

普通なら宿泊客にしか堪能できないサービスの一端を肌で感じることができ、辺りの浜もホテルのビーチパラソルが彩る。

表通りからでは決して分からないホテルのフレンドリーな魅力を、この散歩道から嗅ぎ分けることができるわけだ。

この肩を寄せ合うホテルのなかから、リーズナブルなカフェでひと休みし、お隣のホテルでバリマッサージ、なんて贅沢もチョイスできる。

さて、この浜辺を初めて散歩したときのこと。案内してくれたワヤンくんは、ちょっとビックリな話をしてくれた。

「ケンジさん、知ってる？ほら、どの舟にも目があるでしょ、なぜだか分かる？」。

確かに。なるほど。ふむふむ。

コンペイトウのようにカラフルでカワいい小舟が並ぶ。その舟の舳先（へさき）を見ると、確かに目がある。

「なんで？」

ワヤンくんが言うには、バカバカしいけど、バリの海は波が荒いため自転車の補助車のような3本足付きの小舟が多く、その舟をときどき大きなサカナが襲ってくるそうで、だから、舟にも目を描いて、巨大なサカナを装っているのだそうだ。

ほんとかな？

その何日か後に、釣り船に乗ったときも、舟には大きな目が入っていた。

だけど、3本足が邪魔でね‥‥。
当然、釣りは糸を垂らすだけ‥。
けっこう難しく、1匹も釣れなかった。

舟が巨大魚だと、サカナ、寄って来ないんじゃないかな？！

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